ナム・ショウに行ってきました 2001年1月 その4

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《クリス・プロクター、ピエール・ベンスーザン、リック・ラスキンに会う》

最後の日、日曜日も快晴。ホテルの部屋からガスリー・トーマスに電話。日本を発つ前のガスリーからの知らせでは「行けるとしても日曜日の午後だろう」という事で、現地に着いてから電話連絡する事になっていたのでした。で、初めてガスリーと(大昔1度だけ国際電話で話したような気もするけれど忘れました)話したんですが、彼の住まいからアナハイムまではかなり遠いとの事で、一応最終日の日曜にテイラー・ギターのブースで待ち合わせし、もし彼が行けたら午後1時・2時・3時のどれかに行ってお互い待ってるという変則的な約束をしたのでした。初めて会うのでボクの格好や風貌を知らせたあと「ガスリーは?」と訊くと「私はカウボーイ・ハットかぶってるからPOOHはスグに見つけられるだろう」との事。テイラー・ブースでのシンガー・ソングライター主体のステージを楽しみつつ、約束の各時間に彼を待ちましたが、結局会えませんでした(帰国後、彼から「行く時間が取れなくて申し訳なかった」旨の連絡が届いていましたが....)。で、テイラー・ブースでクリス・プロクターのステージを初めて見ました。彼は4日間とも出演していたにもかかわらず、出演時間は私の方が別の場所で約束があったり、チラッと見かけた時もファンに囲まれていて、話する機会が無いままだったのです。彼がアルバム『TRAVELOGUE』を出した(94年)頃に初めて手紙を出して以降、時々連絡もとりあっていたのですが、会うのは初めて。テイラーのブースで演奏する事も私は知りませんでしたので、前もって彼には何も連絡していません。満員のお客さんを前にした彼のステージが終わり、幾人かのファンとの立ち話が終わるのを待って、近付いて自己紹介したら「POOH、覚えてるよ。キョートから来たの?」と親しみを込めた笑顔が返ってきてホッとしました。話は彼の新作『UNDER THE INFLUENCE』の事になり、「日本に戻ってから聴いてみてくれないか」と、まだその時点では未聴だったそのCDを手渡されました(※)。クリスは、それまでの彼との手紙などのやりとりでも想像していた通り、とても真面目な人で、ステージでも爆笑するようなジョークを飛ばしたりはせず、音楽(演奏)だけで観客を引き込んでいくという感じでした。それから1階の会場に行き、リック・ラスキン(80年代半ばからの付き合いですが、彼とも実際に会うのは今回が初めて)やロウレンス・ジュバー(勿論、会うのは初めてです)がデモ演奏しているブースに出かけ、挨拶しました。リックは長身(185cmくらい?)で、昔より痩せていて、そのせいか私の思っていたイメージより「随分と若いなぁ」という印象。「スライス・オブ・ライフから発売する僕の『WORDS FAIL ME』タブ譜のプロジェクトの作業は進んでる?」「ああ一生懸命やってるよ。何しろ初めての楽譜出版だから、良いものにしたいと思って頑張ってるんだ」「完成するのを楽しみに待ってるよ」なんて会話をし、記念写真を撮りました。そして、ラリビー・ギターのブースに立ち寄るとピエール・ベンスーザンが偶然いたので「やぁ」と挨拶したら「もうすぐここを発つけど、まだ少し時間があるので、どこかに座って話しよう」と会場内の中庭にあるオープン・カフェで2人ともカプチーノを注文し、午後の太陽の光が射す下で色んな話をしました。今もピエールはフランスに住んでるんですが、彼の住まいというのは古いお城なんです。長年の彼の夢だったお城を数年前に購入して、そこに家族と共に住んでいます。彼が主催するギター・キャンプ(合宿みたいに泊りがけで行なわれるワークショップ)もそこでやっていて、参加者が寝泊まりする沢山のベッドが置いてある部屋や食堂、地下のワインセラーの写真等も見せてもらいました。このギター・キャンプの宣伝なんかには「城」ではなく「大きな石造りの昔の地主の家(large old stone farmhouse)」と記しているようですが、近い将来に城内にスタジオの設備も作りたいとの事で、録音機材も集めているとか。ピエールにとってまさに理想的な住空間を手に入れ、今新たなステップを踏み出そうとしている様子が彼の話からも充分に感じ取れ、ファンとしては嬉しい限りでした。

そして再びテイラーのブースに戻り、3時過ぎから始まるジェフ・ピーヴァーのステージを見る為です。ジェフ・ピーヴァーのライヴが日曜日にある事を前日に知らせたイサトさんは、早くも席に座っていて「こっちこっち」と手招き。並んで座って見ました。サポート・メンバーにベースとドラムが参加。ドラムス担当はCPRのドラマー、スティーヴィー・ディスタニスラオ(Stevie DiStanislao)でした。ブルースっぽい曲、ジャズっぽい曲、アップ・テンポの曲やスローな曲と、僅か30分でしたが彼のギタリストとしての持ち味、魅力を存分に楽しめた演奏でした。テクニック的に素晴らしいのは勿論ですが、彼のギターは「音の1つ1つに命を注き込んでる」という表現がオーヴァーでないエモーショナルなプレイで、私もグッときました。終演後、イサトさんも盛んに彼のプレイを褒めていました。演奏が終わって、ファンの輪が無くなった頃、ジェフにイサトさんを紹介しました。イサトさんが「昔、プレストン・リードと共演アルバムを出してたでしょう」と言うと、ジェフは「どうしてそんな事まで知ってるの?」というような顔をしてました。ともかく、ジェフも含め、CPRには早く日本に来てコンサート・ツアーして欲しいと願うばかりです。

それから、エド・ガーハードとケリーに会い、イサトさんと私の4人で地下1階のブリードラブ・ギターのブースへ。そこでマーティン・シンプスンに会って「ウワァ〜、久しぶり」なんて感じで旧交を暖めて、皆んで暫し歓談。そして、ブリードラブのブースを離れ、パウロとアレッシオとの約束の場所で2人を待つ事に。約束の時間より少し遅れてイタリア人2人組がやって来て、合流。我々6人は、イサトさんお薦めの日本料理の店に車をひろって向かいました。開店したばかりで、すぐにテーブルに座れました。ナッシュヴィルの日本料理の店では「寿司もあります、ギョーザもね(それは中華やないか)」という所もあるのですが、アナハイムのその店は、店の玄関から内装は勿論、メニューすべてが本格的な和食オンリーでした。何でも日本人が経営しているとの事で、幾人かいるウェイトレスの女性も全員が趣味の良い和服姿で、英語も話せる日本人女性でした。で、寿司や刺身や焼き魚をはじめ色々とオーダーし、テーブルに次々と運ばれてくる料理に「これは何ていう料理?」「材料は?」と興味津々で聞いてくる4人からの質問にイサトさんと私は苦労しながら答えるというような事をしつつ、宴は進行していきました。しばらくして、エドとケリーが最近CSN&Yのツアーに招待され、バックステージにも行った話をしました。何でもツアーのミキサー関係の人とエドが知合いで、デヴィッド・クロスビーもエドのギターのファンなのだそうです。エドに「どうしてあんなに素晴らしいギター・サウンドが出せるんだい?」とクロスビーが言ったとか。「バックステージでニール・ヤングにも会ったの?」と私が訊ねると「勿論。会うまでは、ニールは少し神経質な人じゃないかというイメージを私は持っていたけど、全然そんな事なくて、凄く健康的で目も血走ったりしてなくて、とても気さくで、楽屋にいる間中、『飲み物はどう?』とかって、ずっと我々に気を使ってくれてたの。あのスーパースターがよ。本当に驚いたわ」との事。とても羨ましくなった私は「ウ〜、その場に居たかったよ〜」と泣くマネをしました。そしたらパウロが突然「There is a town in North Ontario」とニール・ヤングの「Helpless」の出だしを小声で歌い始めたので、私が「Extreme comfort, memory to spare」と続けると「おぬし、知ってるな」という感じで2人でサビの部分まで口ずさんだのでした。それをキッカケにケリーも加わってCSN&Yのナンバーやニール・ヤングの「Down By The River」を歌ったり(そんなに大声で歌って騒いだ訳ではありません、念の為)したのでした。パウロがニール・ヤング・ファンだと聞いて私は彼にグッと親しみを覚えました。それからも、ワイワイガヤガヤと宴は続きました。が、私は泊まってるホテルのロビーでスティーヴ・ヤングと会う約束があるので「9時頃にはホテルに戻らないといけない」旨をイサトさんに前もって知らせてあったのですが、時計を見て「僕はボチボチ....」と言うと「そしたら我々もここはお開きにして別の場所でお茶でも飲むし...」とイサトさんが言い、彼等4人に「POOHさんは、これからホテルに戻ってスティーヴ・ヤングに会うので帰るから、我々も一緒に出ましょう。今晩のディナーは僕とPOOHさんが皆さんへの感謝をこめて奢ります」と伝えました。彼等が喜んだのは言うまでもありません。歩いてホテルまで帰るのには少し距離があるので、店の人にタクシーを呼んでもらう事に。それぞれと再会を約束し、イサトさんとも「日本に戻ったらまた」と私。「了解です」とイサトさん。しばらくして到着したタクシーに乗ってホテルへ。タクシーの車内で、ケリ−かパウロのどちらかが、さっき「スティーヴ・ヤングって誰?」と私に訊いたのを思い出しました。「イーグルスも歌ってるあのSeven Bridges Roadの作者のシンガー・ソングライターだよ」「本当?」「僕も信じられないけど、前もって約束して9時頃には来る事になってるんだ」というような会話でした。「本当に来てくれるのかなぁ。でも、約束したもんなぁ」と思いながら、ホテルに戻って待機。

 

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(※)文中のCD、クリス・プロクター『UNDER THE INFLUENCE』はこちらで紹介しています。
クリス・プロクタ− / CHRIS PROCTOR