プー横丁という店名の由来 その2

 

 プー横丁がオープンした1973年4月の時点では、ニッティ・グリッティ・ダート・バンドの『UNCLE CHARLIE & HIS DOG TEDDY(邦題: アンクル・チャーリーと愛犬テディ)』のアルバムの事はかなり数のロック・ファンがご存じでしたし、熱心なシンガー・ソングライター・ファンなら収録曲「プー横丁の家」も聴いた事があって当然というような状況だった訳です。だから、輸入盤LP専門店としてオープンしたレコード・ショップ『プー横丁』という店名は、レコード・ショップ『不思議の国のアリス』というほど、一般の音楽ファンには奇異な感じには受け取られなかったのです。実際、オープンしてからは、販売契約をした国内のレコード会社のセールスの方(当時は全てのレコード会社の営業担当者が契約してる小売店に月に1回は足を運んで新譜レコードの初回オーダー数の受注を取りに来たりしていました。何とアナログな時代だったのでしょう)からは「プー横丁って変わった名前ですねえ。どこから付けられたんですか?」と訊ねられたりしましたが、店にお越しのファンの方や通販ご利用の全国のファンの方からは「お店の名前はニッティ・グリッティの『アンクル・チャーリー』に入ってる曲名から付けられたんですね」とか「ニッティのプー横丁の家は大好きな曲の1つです。それを店名にされるなんて素敵ですね」などと嬉しい言葉を頻繁に頂戴しました。レコード会社の人よりも熱心な音楽ファンの方が、よほど「ワカッテいた」訳です。

 オープン当初の私は、それでも更に正確に「なぜプー横丁という名前にしたか」という事をお伝えしたくて、ニッティの曲名である事をご存じの方にも「それに加えて、あの曲を書いたケニー・ロギンスがモチーフとして使ったA・A・ミルンの『クマのプーさん/プー横丁にたった家』のプー横丁からも取ったんです」と言ったりしていました。又、稀に店名を何処からか聞きつけてきた(音楽ファンじゃなくて)「くまプー」ファンの方が来店される事もありました。オープン間もないプー横丁にある若い女の子の「くまプー」ファンがお越しになった時は、狭い店内のあちこちを見回しながら「まぁステキ!!」なんて言葉を、彼女が店内にいらっしゃった30分ほどの間に(おそらく)35回ほども言い続けて、私がプー横丁のレコード袋を差し上げると、最後に36ぺん目の「まぁステキ!!」をやって帰って行かれました。あの女の子は、今どこでどうしていらっしゃるのでしょうか。

 オープンして3年後くらいの時に「プー横丁」という店名が付いている絡みで、雑誌『絵本』の増刊号で「くまのプーさん」の特集号が発売され、その責任編集をされていた今江祥智さんから依頼されて、同号に短い文章を書かせて頂きました。その本が出た時にも、全国の「くまプー」ファンの方が何人もお見えになってましたね。そんな「くまプー」ファンの方が来店されて「私はこういう洋楽は全く聞いた事がないんです。記念に何か頂いて帰りたいんですが、私にも聞けるようなレコードで何かお薦め頂けませんでしょうか」と言われた時には、その「くまのプーさん」特集号にも紹介されていたニッティ・グリッティの『UNCLE CHARLIE & HIS DOG TEDDY』をお薦めしていました。

 そんなやりとりが昨日のことのように思い出されます。

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