プー横丁という店名の由来 その3

 

 で、もともと「プー横丁にたった家」というのは『クマのプーさん/プー横丁にたった家』を翻訳された石井桃子さんが原題である「WINNIE THE POOH / HOUSE AT POOH CORNER」の「HOUSE AT POOH CORNER」をそんな風に訳されたのですが、ニッティの『アンクル・チャーリー』の国内盤の初回プレスが発売された時には、発売元の東芝EMI(当時は東芝音楽工業)の制作サイドの担当者の方は、この「House at Pooh Corner」と「くまのプーさん」との関係を全く知らず、従って石井桃子さんの名訳を知る由もなく、「House at Pooh Corner」の「Pooh」を「Poor」と勘違いしたらしく「貧乏横丁の家」と訳し、歌詞カードのタイトルもそう印刷されて出回ってしまったのです。私が当時買い、未だに持っている国内盤も「貧乏横丁の家」となっています。このニュースは大手レコード会社によるケアレス・ミスの一例としてよく話題になりましたので、40代以上の方は既にご存じかも知れませんが、前述のニュー・ミュージック・マガジン誌71年2月号に掲載された時には、更にモノスゴイ翻訳が載っている事を最近知りました。それには何と「変な曲り角の家」と記載されているのです。勿論、これは小倉エージさんのせいでも同誌編集部の責任でもなくて、事前にレコード会社から編集部へ送られた発売前の資料には「そういうタイトルで載っていたから」だと思われます。それにしても「変な曲り角の家」という訳には、マイッてしまったというか、メイッてしまったというか。その事を知った時、私は殆ど「トホホ」状態になってしまいました。
 それと、若いファンの方の為にもう1つお伝えしておきますと、「プー横丁の家」という曲はニッティの『アンクル・チャーリー』に収録された以外に、アメリカで71年(日本盤は72年)に発売されたロギンス&メッシーナの『SITTIN' IN』というアルバムにも収録されています。ロギンス&メッシーナは、当時無名のシンガー・ソングライターだったケニー・ロギンスと、バッファロー・スプリングフィールド(Buffalo Springfield)やポコ(Poco)のメンバーでもあったジム・メッシーナが4人のサポート・ミュージシャンと共に結成したグループで、70年代にヒット曲を連発し、一世を風靡しました。今ではロギンス&メッシーナのデビュー盤として知られる『SITTIN' IN』のアルバムも、表ジャケットに記されている通り、ケニー・ロギンス with ジム・メッシーナ名義でリリースされたアルバムでした。個人的な好みでいうと、その『SITTIN' IN』に入っているスタジオ・ヴァージョンの「プー横丁の家」よりも、74年に2枚組LPで出た彼等の初ライヴ・アルバム『ON STAGE』に収録されたケニー・ロギンスがギター1本の弾き語りで歌っているヴァージョンの方が好きです。

 以上、長々と「プー横丁」の店名にまつわるお話をしました。冒頭に短く説明させて頂きましたように「プーヨコチョウ」の「ヨコチョウ」の漢字表記は「横町」ではなく「横丁」が正しいですので、そう覚えて頂ければ幸いです。

 今後とも宜しくお願い致します。

プー横丁店主 POOH
 
  

  

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