これは、Mojo Workin'の藤尾真司さんにお寄せ頂いた原稿です。 

 

 

私の好きな3枚のアルバム

by 藤尾 真司

  好きなアルバム3枚です。自分は特に何を成したわけでもないわけなので人生を変えた云々という話ではありませんが、中学生、高校生、社会人1年生、それぞれの時期にお世話になり、今でも度々ターンテーブルにのせるレコードを3枚選びました。素人くさい駄文で恥ずかしいです。


  

The Beatles / Abbey Road (1969)

  うんと昔、ぼくが小学生の頃、6つ年上で夜更かしの兄の勉強部屋の隣で寝ていたぼくは毎晩爆音で鳴らされるオーディオの音に悩まされていた、ということがありました。
  で、数年後中学生になった頃には人並みに洋楽に興味を覚え兄の留守中に勝手にレコードを聴いたりしてたのですが、ある日横断歩道の地味なジャケットのレコードに針を下ろしてみたところ、なんとほとんどすべての曲が既に耳に馴染んでいたのです。つまり小学生の頃寝床で隣の部屋から漏れてくるレコードのうちのひとつが「Abbey Road」で、しかも当時たぶん新譜(…かちょっと経った頃かな?)だったはずでけっこうなヘヴィー・ローテーションだったんでしょうね。
  「Abbey Road」を自分で初めて聴いた時は「I Want You (She's So Heavy)」のアルペジオのリフレインが突然中断するところで飛び上がってびっくりしたのを憶えてます。部屋を閉め切りけっこうな音量で目を閉じて夢中で聴いてるところへ親が怒り狂ってオーディオの電源を切ったのかと思ったりして。で、ちょっとドキドキしながらB面にひっくり返し「Here Comes The Sun」の穏やかなイントロが流れ始めた時のなんともいえない多幸感…。これは今でも感じますね。CDでは味わえないアナログならでは間合いかと思います。
  そしてB面のメドレー! 当時ぼくは「SGT」も「Pet Sounds」もまだ聴いたことがなくて、でもコンセプトアルバム云々みたいな話は雑誌か何かで読んだことがあったのだけど、こういうことかー!って思いました。メドレーはもちろん「I Want You (She's So Heavy)」?「Here Comes The Sun」の流れも含め、複数の要素を配置し相互に作用させることで何かを表現する、みたいな感覚をここでなんとなく理解した気がします。あと、レンガ塀の前を横切る女性の足元が写り込んだジャケ裏の写真! これは偶然通行人が横切ったそうだけど、整然としたもののバランスを崩す要素を大胆に配置するヴィジュアルの考え方がめちゃめちゃ好きです。
  ちなみに兄が爆音で聴いてた東芝音工盤LP(ジャケ裏A面の曲順がまちがって印刷されてる!)は今ではすっかりボロボロで針を落とすこともないけどぼくの手元にあります。 

   

  

Neil Young & Crazy Horse / Live Rust (1979)

  中学生の頃、FM NHKの「軽音楽をあなたに」っていうラジオプログラムが大好きでよく聴いてたのだけど、そこで新譜として紹介されたのが「Live Rust」でした。なんとたしか全曲オンエアという大盤振る舞いだったような気がします。
  洋楽を聴きはじめの頃はビートルズとストーンズ命だったぼくは、次第にまわりの友だちの影響でボストン某やジャーニー某なんかのギターオリエンテッドな産業ロック(?)にうつつを抜かし始めてた、そんな矢先にこの放送を聴いてシャキーンと目を覚ましたわけです。この人のことは知らんけどぼくはこういうのが好きなのだー!って確信しました。ストーンズ好きだってだけでオジン臭いとか言われたのにニール・ヤングとなると周りからはまったく賛同は得られませんでしたね。
  で、貧乏だったので小遣いだかお年玉だったかをせっせと貯めて何ヶ月か後、もう高校生になってたのかな? ようやっとレコードを手に入れ(何ヶ月にもわたってすごい執着だなぁと我ながら思う)、それからは狂ったように毎日聴いては声を震わせて一緒に歌ってました。今でもだいたいソラでカタカナで歌えます。
  アルバムはアコースティックセットとエレクトリックセットの2部構成で、ロックキッズだったぼくは当時はアコギはかったるいもんだと思ってたのだけどこのアルバムで完全に認識を改めました。で、アコギを手に入れるなら12弦だぜとも思ってました。あとエレクトリックはビグスビーが付いてなきゃ、っていうのは今でもちょっと思ってます。

  



Ry Cooder / Boomer's Story (1972)

  大阪に出てきたての頃…80年代半ばでニューロマンティックとかのヴィジュアル系、例えばカルチャー某やデュラン某とか、あるいはユーロビートなんかが全盛の頃だったと思いますが、当時ぼくは仕事もうまくできないし(当時イラストレーターやっててクマさんの絵とか描いたり無理のあることしてました)、友だちもガールフレンドもいなくて悶々していたある日、梅田の街をブラブラしてたらたまたま阪急三番街の地下の噴水のあるスペースで行われていた中古レコード市的なのに出くわして、その時に名前しか知らなかったのになぜかライ・クーダーのこのアルバムを手にとってアテモンで買いました。ザラッとした手触りの極端に文字情報の少ないそっけないジャケットで、もしかしたら戦前の人なのかも?とか思わせるようなレコードでしたが、これはいいものにちがいない…みたいな拠りどころのない確信がありました。果たしてそれは思った通り素晴らしい歌と演奏がたっぷり詰まったアルバムで、今では無人島に持って行きたいアルバムの筆頭です。
  スライドギターやマンドリン、ピアノの音色がローファイだけど素晴らしくて、当時も今もこれを聴くと癒されたりほろ苦い気持ちになったります。
  うんと後に知ることだけど所謂ホンモノのブルースマン(スリーピー・ジョン・エスティス)の歌声を聴いた最初のレコードかな? あと「The Dark End of the Street」はインストとはいえ初めて好きになったソウル。それに「Maria Elena」はまずアコギで弾きたい曲No.1です。弾けないけど。
  そしてこれはプー横丁開店の前年の暮れに発表されたアルバム。若きプーさんが開店準備に追われてた頃かな? 開店時には真新しい「Boomer's Story」が並んでいただろうか?などと、久しぶりに聴きながら想いを馳せました。

  


というわけでとりとめないですが3枚選びました。40周年おめでとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。

  

  

 

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