これは、音楽ライターの小川真一 さんに送って頂いた原稿です。 アルバムのジャケットはこちらで用意させて頂きました。

 

「夢の中で抱きしめたくなる3枚」  小川真一

 プー横丁30周年おめでとうございます。

 「私の好きな3枚のアルバム」ということで、あれこれ迷い、三日ほど山に籠もりましたが、結局手近にあった3枚を選んだ次第。「乞うCD化」の意味をこめて、未だ再発されていない3枚を選ばせてもらいました。とはいえ、激レア盤でも超高価盤でもなく、ごく当たり前のものばかり。いわば、レコード棚に置き忘れてしまったような3枚。(小川真一)

 BRIAN FRIEL "same" PYE PYE-12102 1975年
 うらぶれたカフェで珈琲をすする風采の上がらない男、この彼の情けない上目使いにノックアウトされて買ったアルバム。簡単にいってしまえば、米国指向をもったイギリスのシンガー・ソングライターになるけれど、どうにもこうにもあか抜けない。この不器用さが、自分の好きな音楽を守り通しているかの如く聞こてくるから面白い。ラクエル・ウェルチに憧れ、ニール・ダイアモンドのTシャツを着ている女性をうたった"Railroad Mama"のように、固有名詞を物語の背景をとしてうまく引用しているのが、彼の曲作りの特長だろう。「金はねぇ、車もない、あるのは若さだけ。でも俺ももうすぐ23歳」と、まるで吉幾三の「俺ら東京さ行くだ」のような歌詞の"Rock And Roll's In ME"、彼の”自由のために歌うロックン・ローク”が心を掴んで離さない。

 WILLIAM TRUCKAWAY "breakaway" Reprise RS-6469 1971年
 のんべんだらりと休日を過ごす、なんてことはここ十数年した事無いような気がする。せめて気分だけでも、と思いかけるのがこのアルバムだ。何にも考えていないような顔をして、たぶんやはり何も考えていないだろうウィリアム・トラッカウェイ。ふっと舞い降りてきた歌を掌にすくって、そのままにんまりと昼寝する、そんな究極のグッドタイム・ミュージックだ。この手の音楽を作ったら右に出るもののいない(左にもたぶんいない)エリック・ヤコブセン。たぶん、二人して微睡んでいるうちに出来上がってしまったアルバムなんだと思う。音の片隅から、ふっと青草の匂いがただよってくる。

 KEN WHITELEY "Up Above My Head" Boot BRP-2106 1979年
 「ご存じ!オリジナル・スロース・バンドの・・・」といった紹介の仕方でいったい何人のひとが頷いてくれるだろうか。ひい、ふう、みい、5人くらいはいるかな。ここではジャグバンド・ミュージックでも、ヤニ色にくすんだオールド・ジャズでもなく、ゴスペルを聞かせてくれる。ジム・クウェスキンの新作にもいえるんだけど、ルーツ・ミュージックだ、オリジンだといった立て前ではなく、もっとうんと深いところで通底している音楽を、静かに力強く奏でている。シスター・ロゼッタも、ドロシー・ラヴの曲も、どれも彼の為に作られたメロディに聞こえてくるのだ。ブルー・アイド・ソウルの汗くささも、ホワイト・ブルースの肩肘はった感じもなく、ごくナチュラルに響き渡っていく。マイ・オールタイム・ベストな一枚です。

 

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