これは、音楽ライターの宇田和弘さんに送って頂いた原稿です。 

 

「妄想で買った3枚のレコード」

 ヘンなテーマですみません。でも、みなさんはお気に入りのアーティストと似てる名前の人って気になりませんか? ほら、ジェシ・ウィンチェスターのファーストが好きになったとしたら、“ジェシ”という名前のアーティストが妙に気にかかる。ジェシ・コリン・ヤングも、ジェシ・エド・デイヴィスも買ってみたくなったという経験があるでしょう?(ン、オレだけか?)
 そんなわけで、自分のぞっこんなアーティストと同じような名前のアルバムを手にとって眺めては、逡巡するわけです。中味の音楽も似てるんじゃないか、ひょっとしたら親戚なんじゃないかって。五月みどりと小松みどりも、どういうわけか姉妹ですし…。まあ、完全な妄想なんですけどね。以下は、そんなふうにして買った3枚のレコード。雑誌など、他には一度も書いたことのない(当然、書く機会のない)ものです。ご笑覧ください。

 Sam Parsons / Sam Parsons (ABC ABCD-845) P1974
 グラム・パーソンズを本格的に追っかけ始めた頃、買いました。もう絶対親戚じゃない顔してますが、でも万が一そうだったら困るでしょう? それとスニーキー・ピートのクレジットにひかれて…。音は、そうですね、カリフォルニア産ポップ・カントリー。ジム・クロウチとジェイムス・ヘンドリックスと、ジョー・サウスを足して3で割ったような…。軟弱系自作自演歌手ですが、なかなか気に入って今もたまに聴くことがあります。ところでこの人、誰?

 

 Michael Clark / Free As A Breeze (Capitol ST-11680) P1977
 そう言われれば似てなくもない、ジャケットのイラスト。もちろんバーズを連想して手にしたわけですが、やっぱ、別人でした。本家は“Clarke”ですからね。ジェイムス・バートン、グレッグ・リーズ、スティーヴ・ルカサーにリー・リトナーと、やけに豪華なギター陣。ジェイ&ジ・アメリカンズの「もっと寄りそって」をやっていて、この“与作パーカッション”が笑える。しかし悪くない、佳作です。もう1枚アルバムがあるけど、さすがにそれは買ってない。これも今もって正体不明の人。
 

 Charlie Brown / Teton Tea Party With Charlie Brown (Broadside BR-305) P1967
 エリック・ワイズバーグのデリヴァランスにいた同名のギタリストは、素晴らしいテレキャスター弾きで、これは彼のソロ・アルバムを探していた時に出会ったレコード。トピカル・ソング専門のブロードサイドからのリリースなんて絶対おかしいと思ったけど、そういうフォークは望むところの守備範囲なので一応、買いました。もちろん別人。こちらはニュー・エイジ思想の元祖みたいな放浪の人で、ギターやオートハープ、ダルシマーなどを弾きながらトラディショナル・フォーク・スタイルで歌う。いかんせん素人ぽい歌と演奏で、万人にはお勧めしませんが、30年代に実在した現代のアウトローを歌った“The Ballad of Earl Durand”は、60年代に結構注目されたようです。
 

 というわけで30周年、おめでとうございます。プー横丁で初めて買ったレコードは、ダン・クレアリーのファーストでした。あの頃はブルーグラスを浴びるように聴いてました。いいレコード、いっぱいありましたね。
 

宇田和弘

 

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