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トム・マークのプロフィール

 本作『1000年の悲しみ』の5曲目と7曲目に収録された「サッチ・ア・ビューティフル・フィーリング 」と「エンジェル」のベアズヴィル・ヴァージョンにレコーディング・エンジニアとして参加したマーク・ハーモンのアシスタント・エンジニアとして働いていたトーマス・マーク(通称トム)は、70年代から80年代にベアズヴィルで録音された多くのレコーディングに関わっています。現在は、エンジニアとしてだけでなく、プロデューサーとしても活躍する彼に『1000年の悲しみ』全17トラックのリミックスとリマスタリングを担当してもらいました。スペースの関係でCDブックレットには詳しく記載できなかったトム・マークについて、下記にご紹介しましょう。

 解説にも記した通り、「サッチ・ア・ビューティフル・フィーリング 」と「エンジェル」のベアズヴィル・ヴァージョン2トラックでは、レコーディング・エンジニアとしてマーク・ハーモンがクレジットされています。マーク・ハーモンはザ・バンドが71年に発表した4作目『カフーツ』を初め、ベアズヴィル・スタジオで制作された多くのアルバムに関わった人物です。そのハーモンの元で、トムは、レコーディング・エンジニアとしてのキャリアを積んだのです。

 トムがベアズヴィル・スタジオで最初に関わったレコーディング・セッションは、ビリー・スクァイアがレコード会社と契約を獲得すべく録音したデモ・テープ作りだったそうで、彼はアダム・テイラーのアシスタントとして参加しました。

 その後、すぐにマーク・ハーモンの元で、アシスタント・エンジニアとしてポール・バターフィールドのベアズヴィル録音に参加。ポール・バターフィールドはトムも大好きなアーティストの1人だったし、すばらしいレコーディング・セッションで「とても価値のある」経験だったそうです。

 デジタル・ディレイなどまだ無かった時代なので、彼のスタジオでの仕事の1つは、ポール・バターフィールドが好きなサウンドを確保する為、リール・テープのディレイ・マシンがちゃんと作動するように常に気を付けておく事だったとか。

 ほぼ同じ頃、『1000年の悲しみ』に収録されているベアズヴィル・スタジオ録音も行なわれ、再びマーク・ハーモンのアシスタント・エンジニアとしてレコーディングに参加。エリック・カズも好きなアーティストだったので、そのセッションはとても楽しく、ビリー・マンディのドラム・プレイも昨日の事のように憶えているそうです。

 それから、ライヴ・アルバムやホワイト・アルバムや77年作の『RA』など、一連のトッド・ラングレンのアルバムの録音に参加。トムは当時のトッド・ラングレンのバンドを「コントロール・ルームがそれで一杯になるかというような馬鹿デカいシンセサイザーを装備した偉大なバンド」と評しています。

 又、(トム曰く)どういう訳か、パーラメント/ファンカデリックがベアズヴィル・スタジオの事を知り、リハーサルを約1週間やった後、何と3枚のアルバムを同時にレコーディングしたそうです。彼等もトムの大好きなグループだったので、スタジオでの経験は「まさに天国」だったとのこと。続いて、ジョン・ホルブルック(有名なベアズヴィル・スタジオのレコーディング・エンジニアで、80年代初めにはブライアン・ブリッグス名義で『Brian Damage』と『Combat Zone』の2枚のソロ作をベアズヴィル・レーベルから発表している)との共同エンジニアリングでアイズレー・ブラザーズの録音に参加。同じ頃、NRBQのエンジニアリングの仕事もスタートさせ、冬の悪天候の中でアルバム『AT YANKEE STADIUM』のレコーディングを行なう。その時の作業では、丘の上にあるスタジオまで時々行かなければならなかったので、かなりキツかったそうだ。

 トッド・ラングレンがミートローフの78年作『BAT OUT OF HELL』をプロデュースした時、トムはエンジニアとして全てのベーシック・トラックとヴォーカルを録音し、殆どのオーヴァー・ダブも担当。アルバムはリリースまでに多くの人の手にわたった後、発売され大ヒットしたが「最初の数100万枚には僕の名前を(トーマス・マークでは無く)マーク・トーマスとクレジットされていて、その後は何も記載されなくなった」とのこと。同じ頃からジャズ・アルバムも手掛けるようになり、アンソニー・ブラクストンやストーン・アライアンスとの仕事もしたという。

 ベアズヴィル・スタジオでレコーディングされたマッド・エイカーズ/ウッドストック・マウンテンズ・レビューの『WOODSTOCK MOUNTAINS: MORE MUSIC FROM MUD ACRES』と『PRETTY LUCKY』にもトムは参加。スタジオBでウッドストック・マウンテンズ・レビューの『PRETTY LUCKY』を制作していた時、ローリング・ストーンズは全米ツアーの為のリハーサルをスタジオAで行なっていた。当然の事ながら、スタジオの廊下ではそれぞれのメンバーが行き来する際に会釈したり会話したりしていて「幾つものグレイトなシーンが見られた」そうだ。

 「マッド・エイカーズは、まるでレコーディングのテープを廻しっぱなしにしたファミリー・キャンプのようなものだった」とトムは言う。「素晴らしい人たちと長時間共に過ごせた事は僕にとっても特別な経験だったし、その素晴らしさは彼等のアルバムの中に表れていると思う」とも。

 

トム・マークのスタジオ、メイク・ビリーヴ・ボールルーム(The Make Believe Ballroom)でレコーディングされた主要なアーティストと作品は下記の通り。

 

●Bill Bruford/Ralph Towner/Eddie Gomez『If Summer Had It's Ghosts』

●Tony Levin『World Diary& B.L.U.E.』

●Michael Franks『Abandoned Garden』

●Michael Franks『Barefoot on the Beach』

●Michael Franks『Jazz to the World』

●Artie Traum『The View From Here』

●Artie Traum『Meetings with Remarkable Friends』

●Artie Traum『The Last Romantic』

● Jack DeJohnette/ Don Alias- duets

●Chris Potter/ Dave Holland/ Jack DeJohnette/ John Scofield『Unspoken』

●Nrbq/ Takako Minekawa『You Didn't Have To Be So Nice』

●Robbie Dupree『Walking On Water』

●Robbie Dupree『Smoke and Mirrors』

●Robbie Dupree『All Night Long』

 

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