住出さんからのメッセージ

住出勝則 (Masa Sumide)さんからひとこと

はじめまして。 この度、僕のCDがプー横丁で販売されることになりました。嬉しい限りです!
世の中には、まだ僕の名前を聞いたことがない人や、僕の音楽を知らない人が沢山おられると思います。今回、プー横丁という強い味方を得て、ここをベースに僕の音楽を日本全国へ発信できることを本当に嬉しく思っています。一人でも多くの方に僕の音楽が届くことを祈っています。

事の始まりは、僕が東京で(7月)中川イサトさんと初めてお会いしたことです。 以前から中川さんのことは、同じギタリスト(大先輩!)として気に掛かっていました。 会う当日は、「とっつき難い人だったらどうしよう・・・」とドキドキしながらホテルを後にしたのですが、会った途端にそんな思いはふっ飛んでしまいました。 僕が一番嬉しかったのは、中川さんが別れる前に、「今度、僕のホームページで住出君のこと紹介しとくわ」と言われたことでした。 こういう何気ない優しさ、思いやりは身に染みます。そして、これが切っ掛けとなって、プー横丁から連絡をいただいた訳です。 人間関係は、何処でどうつながっていくか分かりませんね。 人に助けてもらうことが多い僕にとって、ふと、「これも『縁』かな?」と思える一瞬でした。

僕がソロ・ギターにスタイルを変えたのは、1996年にオーストラリアへ移住してからです。 理由は、もちろんアコースティックギターが大好きということもありますが、異国でゼロからのスタートを切るにはギター1本から始めるしかなかったのです。 しかし、そうは言っても、僕はそれまで歌を主に唄ってきたので、ソロ・ギターとして弾ける曲が何曲もあった訳ではありませんでした。 その頃のレパートリーは、たった1曲です! それもオリジナルではなく、僕が尊敬するジョー・パスの曲でした。 そういう事情で、ここから、自分のスタイルを創造するため、オリジナルを増やすために2年に渡る長い練習と試行錯誤が続いていくことになります。

初めは、かたっぱしからソロ・ギタリストのCDを聴きまくりました。 ローレンス・ジューバー、パット・カートリー、ドン・ロス、トミー・エマニエル、アール・クルー、マイケル・へッジス、タック・アンドレス、アレックス・デ・グラシ、ペピーノ・ダゴスティーノ・・・と名前を挙げると切りがありません。 聴いたソロ・ギターCDの数は100枚近くになると思います。 そして、あまり他のギタリストがやっていないスタイルや“隙間”を探していきました。 そこで、やっと辿り着いたのが、現在のジャズ、ブルース、ファンクを足したようなグルービー(自分で言うのも恐縮ですが)な世界です。 まだ、自分特有のスタイルが完成したとは言えませんが、少しは見えてきたかなと思っています。

僕には、尊敬してやまないギタリストが3人います。 ノーキー・エドワーズ(ベンチャーズ)、ジョー・パス、タック・アンドレス(タック&パティー)です。 この3人の音楽に出会わなかったら、今の僕は存在していません。 そう思うと、これらの偉大な音楽家に感謝しない訳にはいきません。 と同時に、リスナーの皆様にソロ・ギターの面白さ(深さ)を知って貰えるように頑張ることと、彼らの音楽の良さを伝えていくのも僕の使命のひとつかな、と思いを新たにしています。 

プー横丁には、日本だけではなく、世界の素晴らしいアコースティックギターミュージックが一杯詰まっています。ホームページを拝見しながら、「あぁ、ここにも“音楽馬鹿”がひとりいるなあ」と親しみを感じた次第です。今後とも、僕ら、地味なソロギタリストを長い目で見守って欲しいと思います。

では、いつか皆様とライブでお会いできる日を楽しみにしています。 それまで、お元気で!

 

住出勝則

冬のメルボルンより。

15 August 2001

 

 

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住出勝則さんよりメッセージを送ってもらいました。

ニューアルバム “Ain't Life Grand?” のレコーディング / マスタリング完了!

まず、遅くなってしまいましたが、2月27日〜3月3日の間で行われた中川イサトさん、押尾コータローさんとのジョイント・ライブに足を運んでくださった皆様にお礼を言いたいと思います。ありがとうございました。 お蔭様で、有意義な時間を共有することができました。 何よりも、日本に熱いアコギファンの方々が沢山いてくださる、ということが確認できたことが嬉しかったし、収穫でした。 「よ〜し、これからもギター1本で頑張るぞ!」という勇気と言うか、エネルギーを与えてもらった感じです。 春から日本へ戻って活動を再開しますので、引き続きよろしくお願いします。

さて、今回は、そのライブツアーに先駆けて東京で録音した(2月10〜15日)4枚目のアルバムの話をしていきたいと思います。 まず、お話しておかないといけないことは、ミキサーとして、昔からの仲間である脇田さん(東放学園音響専門学校)が参加してくださったことです。 彼と仕事をするのは、もう20年振り(!)くらいだと思いますが、やはり、昔の“戦友”だけあって、流れた時など関係なくスーッと作業に入ることができました。 安心してプレーに集中できたのも、長年つちかった信頼感があってこそです。 この場をお借りして、彼に「ありがとう!」と言いたいと思います。

僕の場合、通常、レコーディングは一日に3曲を目標に進んでいきます。 これ以上は、集中力が薄れてしまってロクな演奏ができないので、このペースがベストなようです。 そして、予備日を一日押さえておきます。 必ずと言っていいほど、聴き直してみると気に入らない演奏テークが出てくるので、僕にとっては、この一日は貴重な時間(最後のチャンス)となります。 ということで、今回も予定通り(?)3曲も録り直すことになり、予備日の有り難さを痛感した次第です。 また、僕は曲の一部だけをやり直すことが嫌いで、通しで演奏しないと気が済まないタイプなのです。だから、余計に予備日が必要になってくるわけです。

「住出さん、今回はマイクを3種類用意しましたので、まず、一番いいやつを選らんでください」というのが、スタジオへ入ってからの脇田さんの第一声でした。 これまでの僕は、マイクの選定はエンジニアーにまかせきりでした。 というのは、「僕は責任を持って良い演奏をするようにしますから、そちらはそちらの責任で良い音で録ってください」という考え方だったからです。 ライブに関しても、なぜか、僕はそういう考えを持っています。 さて、どのマイクに落ち着いたかというと、ノイマンのチューブマイクです。 型番は知りませんが、値段を聞いてビックリしました。 1本、なんと、60万円もするそうです!

では、このアルバム “Ain't Life Grand?”(タイトルが少し発音しにくいので、略して ”ALG” と呼んでください)の収録曲を紹介していきたいと思います。 文字だけでは、それぞれどんな曲か分からないと思いますが、参考のつもりで気楽に読み進めていってください。

 

1 Ain't Life Grand? − アルバムのタイトル曲です。 「自分が思うほど人生って悪くないんだよ」というメッセージを、心地よいグルーブ感に乗せて表現したい、というのがこの曲の狙いです。 ライブツアーの最終日の宇都宮“エスプリ”でライブ初お披露目しました。 受けた(?)と思う・・・いや、思いたい!

2 Acoustik Funk − 僕の好きな、ファンキーなアップテンポの曲です。 この手の曲は文字で説明するより、早く聴いて欲しい! チューニングは、一番気に入っているDADGBDです。 もちろん、ギターを叩いていますよ。

3 If I Know The Way − マイナーのスローブルースですが、「すごく絵が浮かんでくるし、胸に響きました」と、ライブで聴いた人からお褒めの言葉をいただきました。こういう評価は素直に嬉しい! この曲は、ベッドの中へギターを持ち込んで夜中に作りました。 5分24秒の大作です。

4 Gentle Persuasion − スイングとポップを混ぜたような作品です。 これまでのCDにも必ずスイング系の曲が入れてありますが、今や、スイングは僕から切っても切り離せない存在になっています。 肌に合う、という感じです。 途中のテンポチェンジが面白いかな(?)と思っています。

5 Don’t Turn Me Off − アップテンポのスイングです。 ウォーキングべースラインが命の曲ですが、ライブでは2年前くらいから演奏していた作品です。 生演奏を聴いた方々から、「なぜ、アルバムに入れないの?」という声が多く、今回、少しアレンジを変えて収録することにしました。

6 Homecoming − 昨年のテロリストの犠牲者に捧げた作品で、僕にとっても意味のある1曲です。 いまだに、事故現場から夫、妻、子供、親戚、友人などが帰ってくることを信じて待っておられる方が多いそうです。 その気持ちを察するだけでも胸が痛みます・・・ また、こんな話しもあります。 現場で亡くなったある消防士が可愛いがっていた犬は、今でも、毎日決まった時間に主人を迎えに行くそうです。 動物と人間という違いはあれど、愛する人に対する想いは不変、ということでしょうか。この話しを耳にして、僕は涙が止まりませんでした。

7 Breathless − このアルバムの中で、最も攻撃的な曲です。 一回目に録音した時には、一瞬静かになるパートを入れていたのですが、結局、“イケイケ”で通した方が良いと判断して、予備日に録り直すことにしました。 ちなみに、ストロークは爪全体を使ってダウンストロークでやっています。

8 Afterglow − ポップ系のバラードです。 エンディングに付け加えた“タグ”が味噌です。

9 It Takes Two − ポップの匂いのするラグタイム系の作品です。 僕にとっては、この手のピッキングは苦手でチャレンジと言えます。 ということで、一番録音に時間がかかってしまいました。 改めて、ギター弾きは右手が大切だ、ということに気づきました。 1本、1本の指をバラバラに、しかも、きちんと動かすというのは結構むずかしいんですよね。

10 Groove Thing − 僕の好きなグルーブ系の曲です。 こういう作品は、文句なしにプレーしていても楽しいです! この曲を聴いた、パーカッションプレーヤーのアンディー桧山さん(以前、八神純子さんやチェッカーズ、シグナルのサポートをされてました)は、「住出さんは、専門のパーカッショニストよりノリがいいね。 特に、リズムの“着地”が抜群だね」と、赤面するほど褒めてくださいました。 まあ、そう言われて悪い気はしませんが、僕は“褒め言葉”は半分くらいの感じで受け止めるようにしています。 常に、一歩先を見ていたいし、現状に満足することはありません。ましてや、視野を世界に広げると、上には上がいるわけですから。

11 This Side Of Eden − このバラードは、実は、最初は練習曲として作ったものです。 アルペジオがいまひとつ苦手な僕としては、最初から最後までアルペジオの曲を仕上げて練習する必要を感じていました。 練習が進むにつれて、少しづつ音が流れるようになって行き、また、一番だけしかなかったものがサビなども出来あがって、ひとつの作品として固まっていったのです。 気がついたら、このアルバムの“とり”になっていました。

以上が ”ALG” の収録曲ですが、実は、もう一曲入れるつもりで録音していました。 が、どうしても演奏が気に入らなくてカットいたしました。 こういう事もたまにはあるんです。

とにかく、一日も早く皆様にこのアルバムを聴いて欲しい(!)というのが正直な気持ちです。 CDが商品として上がってくるまで(5月末?)もうしばらくかかりますが、楽しみに待っていてください。 今は、一つの仕事をやり終えた充実感と安堵感で満ちています。

では、今後ともよろしくお願いします。

初春

 

住出勝則

 

 

以下は住出勝則さんより旧譜の各アルバムに関するコメントです。

■Treadin' Easy (1999年リリース)
 この作品は、僕の初めてのソロアルバムということで、とくに思い出深いものです。 「初めてのものは忘れない」と言われますが、まさに、僕にとってはそんな存在になっています。 録音からCDジャケットに至るまで、すべて自分でプロデュースした(もちろん、関係者に助けられながら)というのも初めての経験でした。
 このアルバムの面白い(?)点は、全曲、スタジオの床に座って演奏しているところです。 べつに、スタジオに椅子がなかったわけではないのですが、当時は(1998年11月頃)、タタミの上にあぐらをかくような感じで座った方が、ギターが手に馴染みやすかったのです。 今から思うと、地べたに座ってリズミックな曲(例えば、‘The Chase’ とか ‘Dreamscape’)がよく演奏できたなあ、と我ながら感心してしまいますが、けっこう落ち着いて演奏できたことを覚えています。
 このアルバムの音作りに関しては、全曲、ラインの音源がマイクの音と共にミックスされています。 これは、正直に言うと、意見の分かれる点かもしれません。 生ギターに少しでも電気的な音が混ざっていると嫌だ(!)というリスナーの方もいらっしゃいますし、いや、曲調に合ってるしガッツがあっていいよ(!)と言われる方もいらっしゃいます。 やはり、「好みの問題」ということなのでしょうか? 最近は、僕はラインの音は一切使用していませんが、このアルバムに関しては、エンジニアーのマイケルの好みもあって、ラインをミックスした音作りになっています。
 次に、収録曲に関して少しお話します。 全14曲の中で、とくに、その背景で思い出深いのは、8曲目の ‘Little Min’ と9曲目の ‘Nobody Knows’ です。 ‘Little Min’ は、ミンという名の一匹の犬に捧げた曲です。 当時の僕は、異国の地のオーストラリアでカルチャーショックに苦しんでいました。 悶々とする日々を過ごしていた僕に、安らぎを与えてくれたのがミンだったのです。 しかし、運命のいたずらか、元気だったミンも病魔には勝てず、この世を去ってしまいます。 一方、‘Nobody Knows’ は、1997年に他界した父に捧げた作品です。 当時は、あまりにも急な出来事だったことと、海外で不幸を知らされるという巡り合わせに、しばらくの間呆然としてしまいました。 「もう、明日のことはどうなるか分からないなぁ・・・」 と、その時ほど痛切に感じたことはありませんでした。 それ以来、人生に関して真剣に考えるようになり、「自分がやりたいことを追求するのが人生ではないか。しかも、できるうちに」と、益々アコースティック・ギターにのめり込んでいきました。 ジャケットの中に一枚の写真が載せてあります。 それは、両親が北海道で撮ったもので、特に父が気に入っていた一枚です。 父は、大きく引き伸ばして部屋に飾ろうとしていたそうですが、その出来上がってきた写真を目にすることはありませんでした。
ラスト曲の‘Echoes’ は、僕の妻のお父さんのトム・オリバーさんが名付けてくれたものです。 彼が初めてこの曲を聴いた時、遠い岸から(日本?)‘こだま’が聞こえてくる感じを受けたそうです。 ついでに、彼のことを少しお話しますと、実は、彼はこちらではけっこう有名な俳優さんで、“ネイバーズ”というテレビドラマにレギュラー出演しているのです。 この番組は、かつては、カイリー・ミノーグ、ラッセル・クロー、ガイ・ピアスなども出演していて、オーストラリアでは「国民的」と言われるくらい歴史のあるものです。 ご参考まで。
ジャケット写真は、妻のお母さんの家の近くにある湖で撮ったものです。 最後の最後に一枚残っていたフィルムで撮ったのですが、「ラスト一枚だから、何か違うことをしてよ」と、恐〜いカメラマン(妻)から命令されてとったポーズです。 ギターを裏表に持って舌を出しているのは、僕の彼女に対する‘反抗心’の表れです!
なにはともあれ、僕のソロ・ギター音楽の出発点(原点)となった ‘Treadin’Easy’ を、ぜひ、聴いてみてください! よろしくお願いします。

■Cool Exposure (2000年リリース)
 タイトルに反して、「とにかく暑かった!」というのが、このアルバムの思い出です。 というのは、録音時期が真夏で、しかも昼間に作業をしていたからです。 こう言うと、「オーストラリアのスタジオにだって、クーラーくらいあるでしょう!」という発言が聞こえてきそうですが、運悪く、その期間は空調設備が整備中で、まったくクーラーがきかなかったのです。 指にとっては、寒いよりはるかにましですが、汗をかいた右手がギターのボディーにべちゃ〜っとふっ付くのには参りました。
 このアルバムあたりから、少しづつパーカッシブな曲が増えてきています。 1枚目では、あまりギターのボディーを叩くような作品はなかったのですが、”Cool Exposure” にはその手の作品が数曲入っています。 それには理由があります。 ひとつには、その当時の僕の周りの状況が多分に影響している、ということです。 どういうことかと言うと、オーストラリアには、日本で言う「ライブハウス」と呼ばれる“しっかりと音楽を聞く”ようなお店が少なく、ライブをやるにしても、ほとんどが、「パブ」、「レストラン」、「カフェ」というタイプの場所なのです。 だから、たとえ、そこで誰かが生演奏していたとしても、飲み食いの方が中心になって、音楽は二次的な扱いになってしまうのです。 その上、常にザワザワしていて、人が歩き回っている状態です。 そこで、僕のようにアコギ1本、しかも、インストで勝負している者にとっては、そういう人たちを「振り向かすもの」、つまり、カッコよく言うと“技”が必要だったわけです。 そういう事情で、数々の試行錯誤の結果たどりついたのが、「ワンマンバンド」と呼ばれるスタイルだったのです。 ベースとメロディーラインを一緒に弾いたり、ギターのボディーや弦を叩いてドラムの分まで一緒にやる、というのはべつに珍しいことではありませんが、僕の場合は、「アコギ1本、インストというだけでナメられたくない!」という強いエネルギーの元に生まれたものなのです。
 では、次に収録曲をピックアップしてご紹介しましょう。 まず、3曲目の ”Funky Paradise”。 これは、先ほどの「ナメられたくない!」という気持ちを曲にしたものですが、ギター1本でも身体が動いて踊りたくなるような曲が作れないか、という発想からスタートしたものです。 同じような流れの作品として、7曲目(Get Down & Shuffle)と12曲目(Satori)があります。 また、少し毛色の違うところでは、10曲目の “Paris Rag” です。 この作品は、右手のフィンガリングが今ひとつ下手な僕としては、チャレンジと言えるものです。 第1フレットにカポをして演奏しているのでポジションを間違う可能性も高いのです。 なぜ、中途半端なフレットにカポをしているかと言うと、僕が好きなチューニング(DADGBD / DADGAD)だと、どうしても曲のキーが「D」ばかりになりやすいからです。 そこで、同じキーの曲が続くのが嫌いな僕としては、聴感上、少しでも変化を出すために半音上げて演奏することにしたのです。 ちなみに、“Paris Rag” は、こちらのABCというラジオ局でよくオンエアーされました。 さて、最後の曲の “Where My Heart Belongs” ですが、これは、母のことや自分の故郷のことを想いながら作ったバラードです。 日本から帰豪したある日、ギターを弾いていて自然に流れ出してきたメロディーです。自分でも好きな作品のひとつになっています。
 このアルバムを制作して一番嬉しかったことは、僕が尊敬するギタリストのタック・アンドレス(タック&パティー)さんが試聴して絶賛してくださったことです。彼にすれば、赤の他人からコメントを頼まれて、まさか、「ん・・・ イマイチでした」とは言えなかったと思いますが、「最初の2秒聴いただけで、すばらしい(!)と分かった。 本当に刺激になったし、僕の周りの人に宣伝しとくよ」とまで言ってくださいました。 この、雲の上の存在のアーティストの言葉が、僕のギターに対する情熱に新たな火をつけたのは言うまでもありません。

■Shadow Dancer (2001年リリース)
 このアルバムには11曲の作品が収められています。 まず、11曲と聞いて、なにか中途半端な数字だと思われませんか? なぜ、12曲にしなかったのか・・・と。 実は、レコーディングした数は12曲だったのです。 ということは、その中の1曲が気に入らなかったのでは(?)と想像されると思いますが、そうではなく、なんと、エンジニアーのマイケルがコンピューターの操作ミスで消してしまったのです! しかも、マスターテープを作る段階で。 僕は、あえてその曲を再録音しませんでした。 なぜかと言うと、その時点でアルバム全曲をひとつの流れ(リズム)の中で録り終えていましたし、その曲をやり直す気力も残っていなかったからです。 しかし、今から考えれば、結果的には11曲でよかったと思っています。 消された曲が(ちなみに、”Now And Then” と言います)少し重めのバラードだったということもあり、逆に、ない方がスッキリして全体の流れも良いようです。 不幸中の幸い、といったところでしょうか。
 僕は、このアルバムでやっと自分のスタイルと方向性が見えてきたかな(?)と思っています。 仕上がりの方も(完璧とは言えませんが)、自分で納得のいくものになっています。 このアルバムの収録曲が、そこそこ受けるのでは(?)と思えるようになったのは、2000年秋にこちらの音楽業界のイベントで、このアルバムから何曲か演奏した時のことでした。 僕は、ヤマハのアコギのデモ演奏で参加させていただいたのですが、エレキのデモにはニューヨークからマイク・スターン氏が来ていました。 恥ずかしい話ですが、僕はその時点でマイクの名前を聞いたこともなく(僕が聴く音楽ジャンルの違いで)、一体誰なのかということも知りませんでした!会場で彼のプロフィールを見て、初めて彼の実績の凄さに驚いた、という状態でした。 その彼が、なんと、僕が演奏するたびに2〜3メーターくらいの距離からしっかりと見ていたのです。 そして、演奏後に(Shadow Dancerの作品を何曲か聞いた後)僕の側に寄ってきて、「君は凄いねぇ。 どうやってそのスタイルに落ち着いたの? ちょっと、やり方を教えてくれる?」と真剣な眼差しで聞いてきたのです! 僕は心の中で、「えっ、冗談でしょ。 マイルス・デービスのギタリストだった人が僕にギターを教えてくれって?」と信じられませんでしたが、マイク自身はかなりアコギに興味がある様子でした。
 また、オーストラリアのアコギメーカーの「メイトン」のデモでトミー・エマニエル(この人も凄い!)も来ていたのですが、マイクは、「あの、トミーがやってるようなベースとメロディーを一緒に弾くには、どうすればいいの?」と、僕に質問を浴びせ続けていました。 世界レベルになっても、子供のような好奇心を持っている彼には感心しましたし、フレンドリーな人間性も(いつもニコニコしていた)魅力的でした。 そして、初日が終わった時、「今、次のアルバム用でブルースっぽい曲を作ってるんだけど、後で俺の部屋でジャムセッションしない?」と誘ってくれました。 しかし、彼は時差ボケには勝てず、部屋に入った途端寝込んでしまったようです。 ということで、結局、ジャミングは‘幻’のものとなってしまったのです。 残念!もうひとつ嬉しかったのは、マイクもジョー・パスの大ファンだということです。教則本まで買って勉強しまくったそうです。 そこで、「ちょっとジョー・パスのコードワークをやってください」とお願いすると、いとも簡単にスラスラと弾いてくれましたが、速すぎてついていけませんでした!
 さて、話をアルバムに戻しましょう。 僕は、この “Shadow Dancer” で初めてクラシックの匂いのする曲に挑戦しました。 最後に収録されている “Precious Moments” ですが、日本人の僕としては、やはりマイナーのバラードはしっくりきます。 演奏をしていてもスーっと入っていける感じです。 曲調としてはシンプルなのですが、演奏する上では左手よりも右手が重要になる一曲と言えます。 3曲目の“One Heart” も同じ流れの作品になっています。 このアルバムは、‘打撃系’、ジャズ系、バラード系の3系統がバランスよくミックスできたのではと思っています。 もちろん、毎度のことですが、「あそこはこうしておけばよかった・・・」という気持ちはあります。 しかし、それは次のアルバムで昇華させていきたいと思っています。

■Ain't Life Grand? (2002年リリース)
 このアルバムは、まだレコーディングがスタートしていません。 しかし、どんな感じのものになるのか簡単にお話しておきたいと思います。 まず、当初は日本でのライブツアーから帰ってきてから録音する予定でしたが、ツアー前に東京のスタジオでレコーディングすることにしました。 久し振りに環境が変わって、それがどういうふうに音に影響していくのか、今からひじょうに楽しみにしています。
 アルバムのテーマは、「人生への賛歌」です。 ともすれば、ネガティブな考え方にならざるを得ない今の世の中ですが、「いや、でも人生は思ったより楽しいんだよ」というメッセージを伝えたい、というのが今回のコンセプトです。 収録曲は12曲の予定で、よりメロディーを重視した作品を選びました。
 詳しいアルバムの内容に関しては、追って「プー横丁」のサイトをお借りしてお知らせいたしますので、今しばらくお待ちください。

 

 では、今後とも引き続きよろしくお願いいたします。 僕のCDに対するご意見、ご感想を、ぜひお聞かせください。 より良い音楽を目指すためにも、皆さんの率直なご意見をお待ちしております。 ご遠慮なく、下記のEメール住所までどうぞ。

 

info@masasumide.com

 

最後に、「プー横丁」を通して僕のCDを購入してくださった皆様に、心からお礼を言いたいと思います。 ありがとうございました! 今後とも、ソロ・アコースティックギター音楽を応援してください。 よろしくお願いします。

 

2002年1月16日(水)− 真夏のメルボルンより。

 

住出勝則

Masa Sumide

 

 

プー横丁へのメールもお待ちしてます。


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