POOHの世間話コーナー

ウッドストックに行ってきました/その2

 アーティの家は白い小さな木製の格子戸があって、そこを通ると右手に大きな木があり、その木には沢山の実がなっています。家庭菜園と思われる果物や野菜が植えてある横を通って玄関に入ると、満面に笑顔のアーティと2メートルはあるかという長身の男性が、これまた笑顔で立っていました。トム・アクステンスです。アーティとハグし合ってから「POOHです」と言ってトムと握手&ハグ。今年1月にカリフォルニアのNAMMショウに行った時、3月25日スライス・オブ・ライフから発売のトムのアルバム『オリジナル&トラディショナル・ミュージック』の事やなんかで最終の打ち合せをする為に電話で話した事はありますが、実際に会うのは初めてです。今のトムは、一見した感じジム・ルーニーにとても似ているなぁというのが私の印象。「やっと会えたね」と言い合って立ち話を続けていたら、アーティの奥さんビヴァリーが「あっちのテーブルで座って話しすれば?」と言ってくれ、我々4人は2つの大きな窓から明るい光のさすテーブルへ。「ビヴァリーはね、アンティークな家具が好きで、この家にも沢山あるんだ。アンティーク家具の店もやってるんだよ」と説明するアーティ。見ると、そのダイニング・テーブルやイス、部屋のコーナーの飾り棚など、年代物の(でもヨーロッパ・タイプのものよりアメリカン・カジュアルといった感じの)家具がありました。

 テーブルにつくと、すぐさま私は持って来たおみやげの日本茶をトムに渡しました。凄く喜んだトムは、自分のカバンから何やら取り出そうとしています。そして「POOHはこっちは持ってるだろうけど、こっちは持ってないだろう」と言いながら、LPとCDを1枚ずつテーブルの上に置きました。見るとLPは彼の『オリジナル&トラディショナル・ミュージック』で、CDは彼が1988年にBilly Voiersと共に限定制作したデュエット作『BLUE LINE BOOGALOO』でした。この共演アルバムに収録された5曲をトムと私で選んでボーナス・トラックとして追加し、スライス・オブ・ライフ盤として発売した訳ですが、ボーナス・トラックを決めるに当たってはカセット・テープを送ってもらって相談し合ったので、CDの実物を見るのは初めて。「これが、そうかぁ」と思いながら、LPにも目をやると表ジャケットの右上のところに既にサインしてくれています。で、「実はトムに会えたら、サインしてもらおうと思ってジャケットだけは持ってきてるんだ」と言って私が同LPをカバンから取り出して見せたら「そうか。そうだったんだ」と言ってトムがアーティの方を向くと「トム、POOHはいつも何に関してもバッチリ用意してるんだ。解っただろう?」とアーティ。「そんな事ない。いつもドジばっかりだよ」と言って笑い、持参のLPにもサインをしてもらいました。

 「それから、ハッピーとアーティには別のプレゼントを持って来てるんだ。いつも日本からの手みやげは日本茶ばかりで、2人とも飽き飽きしてるだろうから....」と言ったら、ハッピーは苦笑し、アーティはとんでもないという表情をしました。「....で、ギフトというより宣伝かも知れないなぁ」と言いながら、スライス・オブ・ライフから発売したばかりのリック・ラスキンの『ワーズ・フェイル・ミ−(WORDS FAIL ME)』のタブ譜を取り出し、2人にプレゼントしました。ハッピーとアーティ、2人とも「スライス・オブ・ライフは楽譜も作ったのかい。凄いじゃないか」とか「綺麗な本だなぁ。あっ、(中川)イサトが何か書いてる」「この本の推薦文をイサトさんが書いてくれたんだ」「フーン、この監修者って書いてあるマサアキ・キシビって誰?」「キシビじゃなくて、キシベって発音するんだ。プロのフィンガースタイル・ギタリストで、そこにも書いてあるけど、昔はイサトさんのギター教室の生徒だったんだ。ソロ・アルバムも2枚出してるよ」「このギターの写真は何?」「それはリックが愛用してるギター。タブ譜&楽譜だけしか載ってない本は作りたくないと思ってたんだ。それに、リック・ラスキンの事を初めて知る人にも彼の色んな事を知って欲しかったんで、僕から色々と彼に頼んで写真送ってもらったり、コメントを書いてもらったりしたんだ。とても協力的にやってくれたんで感謝してる」「リック・ラスキンは今どこに住んでるの?」「シアトルだよ」「仕事で来月シアトルに行くんだ。一度会ってみたいなぁ」などと口々に言い合い、暫しその本の事で盛り上がりました。

 ハッピーはホームスパンの社長としての仕事があるので、程なく帰り、それからはビヴァリーも加わって談笑。テーブルの上の小皿にはブルーベリーが、その横のカゴにはピンポン玉をひとまわり大きくしたようなサイズの洋ナシが幾つか盛ってあります。アーティは会話の間にそのブルーベリーを南京豆か何かをつまむように口に運んでいます。「POOHも良かったら食べて」と促されて私も食べてみると、小粒なのに味が濃くて美味しい。「うちの庭でビヴァリ−が育てたんだ。こっちの洋ナシもだよ。門の近くにある大きな木、あれに毎年500個も実がなるんだ」「2人じゃ食べきれないから、皆んなに分けてあげてる。POOHも食べてみる?」と言ってアーティは1個取って私に手渡し、続けて自分の分も取るとガブリ。一瞬そのまま食べるのを躊躇している私に気づいたのか、ビヴァリーが「化学肥料とか農薬は全然使ってないから、そのまま食べても大丈夫よ。ここに引っ越してきて16年になるけれど、土が肥えてるから化学肥料も農薬もやらなくても水だけで毎年実がなるの。友達の中には害虫駆除の薬だけ短期間使う人もいるけれど、私はそれもしてないの。完全なオーガニック・フルーツよ」と説明。で、私もガブリとかぶりつくと、こちらも濃い味なんだけれど甘すぎず(スミマセン、グルメじゃないので味に関して余り語彙が多くないんです)美味しいので、思わず「美味しい〜」と日本語で言ったら「オ・イ・シ・イ?」「それ何?」と訊かれ、「デリシャスというのを日本語でオイシイというんだ」と答えると「オイシイ、オイシイ」と彼等3人は口々に言い合いました。

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