ナム・ショウに行ってきました 2001年1月 その2

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《NAMM SHOW 1日目》

去年建て直され更に大きく広くなったというコンヴェンション・センターは、とにかくデカいの一語。大小2000以上ものブースが地下1階・地上2階に設営される訳ですから、その広さも当然といえば当然なんですが、一番広い1階のフロアーは天井までの高さが10メートル以上はあって、ちょっとした「街並み」を歩く感じ。受付けで貰った展示ブースの場所やその他の情報が載っている結構ぶ厚い本を見ながら3人で会場に入りました。10分もしないうちに、ジャック・ストッツェムがデモ演奏しているのを発見。それを立ち止まって聞いている幾人かのナム参加者を見ると、その中に何とイサトさんがいるではありませんか。ジーンとメリッディアンに気づいたイサトさんが2人と挨拶して一瞬間があいた時に「イサトさん、こんにちは」と後ろから声をかけると振り返って「えっ、来てたん?」と驚くイサト氏。「ビックリしはった?」と私。「うん、びっくりした」なんて事になり、ナム・ショウに来るのを急に決めた事を話しました。その説明をする私とイサトさんの会話を日本語が判らなくても想像で理解している様子のジーンとメリッディアンはニコニコしながら頷いています。それからイサトさんも含めた我々4人はアーティ・トラウムが居るはずの2階のテイラー・ギターのブースに向かいました。続き部屋2つからなるテイラーのブースは、1メートルほどの高さのステージ及び100席ほどのイスが用意されたライヴ・スペースと、ギターの展示&商談スペースに分かれています。すぐにアーティ・トラウム夫妻と再会し、ハッピーと奥さんのジェーンも交えて暫し6人で立ち話。で、テイラーのステージではスティーヴン・キングが、彼のCDではお馴染みのビートルズの曲を演奏しています。「となりのステージではアコースティック・ギタリストのインスト演奏をやってるの?」とアーティに訊くと「いや、ギタリスト&シンガー・ソングライターも結構出演する。1アーティスト30分のステージで10分の休憩をはさんで朝10時から午後6時までNAMMの4日間はずっとやってる。いつ誰が出るかは入り口にスケジュールが貼ってあるよ」との事。イサトさんは、その夜にあるマーティン・ギター主催の「Martin Dealer Dinner」の為の打ち合わせに行ったあと、私たちは会場近くのホテルのレストランで昼食をとりました。それから、次にテイラーのステージに立ったのがドイル・ダイクス。演奏が始まる直前になると沢山の観客が集まって立ち見も出るほどで、彼の人気の高さを知りました。そして、私はジーンとメリッディアンに相談して、その夜はピエール・ベンスーザンのコンサートに行く事にしました。 コンサート会場に着くと、我々は会場前でばったりピエールと会いました。「久しぶりだなぁ。来てくれてありがとう」とジーンとメリッディアンと抱き合うピエール。ジーンが「Pierre, This is POOH」と私を紹介すると「POOH、やっと会えたね」と、いかにもフランス人って感じのオーバーなアクション(でも、決して嫌味な感じに見えないのは彼の持っている雰囲気&国民性の違いでしょうか)でハグしてくれました。

で、その夜の彼のコンサートですが、200名ほどの客席は満員。数日前に出来たばかりというローデン(Lowden)・ギターのベンスーザン・シグネチュア・モデルを初めて使い、最新アルバム『INTUITE』からの曲を中心に演奏しました。観客も大満足のコンサートが終わり、我々と彼の友人7、8名がピエールとジーンの車に分乗し、ピエールのホテルでワイン・パーティ。例によってアルコール類に弱い私は昨晩に続き「ホロ酔い気分+α」という感じになり、眠くなるのを堪えるのがやっとで、後の事は余り憶えていません。多分、午前1時をまわった頃にジーンの車でホテルまで送ってもらって、バタンキューで眠ったのだと思います。

 

《ハッピー&アーティのコンサートで思わず涙》

 翌日の金曜日はリッケンバッカーのブースでジョン・ジョーゲンスンに会いました。ジョンとも2年ほど前から連絡を取り合っていましたが、今回初対面。「やぁ、きみがPOOHか。会えて嬉しいよ。今から僕のバンドのベースとキーボード奏者の3人でデモ演奏やるから聴いていってくれ」との事。彼等のミニ・ライヴが始まると、ブースの周りは黒山の人だかり。20分足らずの演奏でしたが、立ち止まったNAMM参加者の度胆を抜くのには充分の快演でした。それから私は再びテイラー・ギターのブースへ。前日にアーティから「明日のテイラーでの僕のライヴではハッピーと2人で演奏するよ」と聞かされ「エエーッ!!」と驚かされたのでした。テイラーのブースに着くと既に1つ前のライヴは終わり、休憩中。ステージではハッピーとアーティがサウンド・チェックをしています。ほどなくして始まったハッピー&アーティの演奏1曲目を聴きながら、ハタと気づきました。「よく考えたらハッピー&アーティのコンサートを生で聴くのは初めてじゃないか」と。「マッド・エイカーズ公演で初来日した後、1、2年後にトーカイ楽器主催でギター・ワークショップの為に2人だけで来日した時に大阪で見た時も、あくまでワークショップという感じで2人は別々にギターのデモ演奏をやっただけだったように思うし....。そうだ、2人のデュエット演奏を観るのは今回が初めてじゃないか」と思い始めたら、何だか急にググーッと熱いものが込み上げてきて、図らずも私は涙してしまったのです。それも、サメザメと泣くというか3曲目くらいまで「涙が止まらない」状態になってしまいました。こんなに思いもかけず瞬時に人前で(といっても皆んなステージの方を見ているので私の様子には気づかなかったと思いますけれど)ボロボロと泣いたのは初めてです。何か聴くうちに、私の涙も出尽くしたようで、ようやくおさまりました。するとアーティが「最後に僕等の友人ボビーの曲をやります」と紹介して、あのハッピー&アーティのキャピトル盤デビュー作3曲目に入っていて、アルバム『ベースメント・テープ』にも収録されているボブ・ディランの曲「Goin' Down To See Bessie」を2人が息もピッタリで歌うもんだから、冷静さを取り戻しつつあったのに私は再び泣いてしまったのであります。僅か30分のステージでしたが、NAMMショウに来た甲斐がありました。2人のコンサートは終わり、客席が明るくなって大慌てで涙をぬぐいましたが、席を立ち上がって振り返ったらアーティの奥方のビヴァリーがそこに居て目が合ってしまいました。私の顔を覗きこんで、何かあったのかと訊くように「Pooh? Are you OK?」と言うから「2人の演奏に感動して泣いてしまった」と白状すると「How sentimental it is!」と言われてしまいました。それから、1階のローデンのギター・ブースでトッド・ハラウェル(Todd Hallawell)に会ったり、プー横丁カタログでも何度か掲載したソロ・アルバム『ALL THE WAY HOME』が好評のマンドリン奏者、ボブ・アップルバウムに会ったりした後、ジーンとメリッディアンと共に夕食を済ませました。

《イサ忠のステージは大好評だった》

我々3人は金曜の夜、中川イサトさんと吉川忠英さんがデュオで出演するのを観るべく、マーティン・ギター主催の「Acoustic Cafe」というコンサートへ向かいました。会場となっているパシフィック・ボールルームというところは、かなり大きなスペース。我々が着いた時には、イサトさん達の1つ前のアーティストが演奏していました。司会者がイサトさんと忠英さんのキャリアを説明(当然と言えば当然ですが、五つの赤い風船はFive Red Balloonsと訳され、紹介されていました)した後、2人が盛大な拍手に迎えられて登場。デュエットあり、ソロありのステージでアメリカの観客も充分に楽しんでいました。イサトさんがソロでやった「チョット・トロピカル」はやはり凄くウケてましたし、忠英さんがホーミングのヴォーカルを披露した時も盛んな拍手がありました。イサトさんのインスト・パートも含めた「上を向いて歩こう」を日本語で忠英さんが歌い、全8曲のイサト&忠英のデュエットは終わりました。我々はスグに楽屋を訪れ、ジーンは2人が長年のコンビを組んでるデュオのように独特の雰囲気があったと感想を伝えていました。イサトさんは「これでナム・ショウでの用事が終わったので、明日からはゆっくりできる」とホッとした様子。で、ジーンから前もって聞いていた事ですが、アナハイムから車で8時間かかるところでメリッディアンのギグが翌日の土曜日にある為にジーンはメリッディアンを乗せてハイウェイのすいている夜中にずっと走り続け、できるだけ目的地の近くまで今夜中に行かないといけないので、今晩でジーンとメリッディアンとはお別れです。イサトさん達の楽屋を出てから、ジーンの車で私をホテルまで送ってくれました。ホテル前で、互いに固くハグし合い、再会を約束した後、彼等は同地を離れました。

 

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