POOHの世間話コーナー

エリック・カズ初来日ツアー滞在記 その3

- 神戸翌日の朝食 -

 約束通り翌朝の7時過ぎ、私の部屋にかかってきたエリックからの電話をきっかけに起き、ホテルのレストランで朝食バイキングを食べながら四方山の話をしたのですが、前夜のコンサートでやはり気になっていたのでしょうか。エリックの方から「ジョージ・ストレイトの名前を知らないオーディエンスが多かったなぁ」というような話が出ました。私は「確かにアメリカに較べれば日本でのジョージ・ストレイトの知名度は信じられないほど低いと思います。でも、僕も含めて日本人にとって英語での会話の中で人の名前を正確に聞き取るのは難しいんです。ジョージ・ストレイトと突然言われても(エリックは前夜のコンサートでは「There's a man from Nashville, George Strait」と話し始めました)、それがアーティストの名前なのか食べ物の名前なのか分からなくて反応できない人は多いと思いますよ。だから、例えば『Do you know a country singer, George Strait?』みたいに少し説明するような言葉を入れれば随分お客さんからの反応も違ってくる気がするんですが...」と、説明しました。それと「ベス・ニールセン・チャップマンの場合なら『Do you know a singer-songwriter, Beth Nielsen Chapman?』って言うと良いと思うけれど、彼女のファースト・ネームのベスのティーエイチ(th)の発音は我々日本人には特に聞き取るのが難しいんです。聞こえないといっていい位。だから、ベスニールセンチャップマンみたいに一気に言うんじゃなくて、ベス、ニールセン、チャップマン、という風に区切って言う方が良いと思います。こんな事まで言うのは余計なおせっかいかもしれないけれど、ジョージ・ストレイトの話をしてたら思い出したので.....」と付け加えました。エリックは「サンキュー」と言ってくれましたが、ちょっと細かい事を言い過ぎたかなと思いました。でも、次の京都公演でベス・ニールセン・チャップマンとエリックの共作曲「All I Have」を歌う前の説明では「ベス、ニールセン、チャップマン?」と区切ってエリックが言って、少しですが客席からも反応がありましたので、説明しておいて良かったです。

 私も朝食は欠かさずちゃんと食べるほうですが、エリックは朝食を結構しっかり食べます。「朝食をしっかり食べて、昼食も2時頃にしっかり食べて、ライヴの前にコーヒーを飲んで、コンサートが終わったらディナーだ」なんて話してました。夜はそんなに食べないし、タバコや酒も全然やらないし、エリックは健康にはかなり気をつけてるようです。日本でのツアー中のコンサートがある日の3度目の食事をとる時間はかなり遅かった訳ですが、普段は午後6時台に夕食をとって10時か11時台には眠るって言ってました。朝は(今回のツアー中もずっとそうだったようですが)7時か8時には起きてるようで「4時半とか5時半に目が覚めても7時まではベッドの中にいるようにしてる」らしいです。私もハジメ氏も「メチャ健康的だなぁ」と感心してました。で、この日の朝食も和洋のバイキング形式だったのですが、(一度にガバッと取ったりはしないんですが)色々なものを何度かに分けて食べてました。「もう1回取りに行くのは行儀が悪いかな」なんて言いながらコーヒーもオレンジ・ジュースもお代わりして飲んでたようです。

 それから、どうして休憩なしで90分ぶっ続けで演奏するのかも訊いてみました。「途中で休憩を入れて前半と後半に分けて演奏しても良いんじゃないですか?」という問いにエリックは「バンドと一緒ならギター・ソロがあったりして息の抜ける時があるけれど、ソロの弾き語りじゃそうはいかない。オーディエンスはずっと僕を見てる。僕の歌と演奏にじっと耳を傾けてるんだ。それにコンサートにはメリハリが必要だし、徐々に盛り上げて最高のピークまで持っていって終わらないといけない。1人だけのパフォーマンスでそれをやり遂げる、それはとても難しい事だ。高い入場料を払って見に来てくれているファンに対してアーティストは、その入場料と同じかあるいはそれ以上の満足を与えて『今夜は楽しかった』と思って帰ってもらわないとダメだろう? 休憩を挟んで、もう一度最初からオーディエンスを高みまで持っていくのは至難の技だよ。それなら、ずっと続けて演奏する方が僕にとっては(疲れはするけれど)まだ楽なんだ」と説明してくれました。 

 朝食を終えてから、ホテルの中庭や近くを2人で散歩。エリックは街並の何の変哲も無い風景をカメラに収めています。ホテルに戻るとエリックが「なぁPOOH、さっきの朝食バイキングの料理を1枚カメラで撮りたいんだけど、行儀悪いかな?」と遠慮気味に訊くので「食事してる人を勝手に撮影したら失礼だけど、料理だけなら構わないと思うけれど。念の為にレストランの人に確認してあげますよ」と言ったら「そうかい」と再度レストランに入り、私がホテルの人に「あの方が朝食バイキングの料理が美味しかったんで、写真に撮っておきたいと言って...」と説明しているのを横で聞き、OKが出たらしい事を知ると、さっき自分が食べた幾つかの料理の大皿の前に立ってシャッターをカシャッ。クルリと振り返って私の方を見た時のエリックは、それまでに一度も見せた事のないような「満面の笑顔」でした。まるで、一大事を成し遂げた少年が「やったぁ〜」と大喜びした時のような無邪気な笑顔だったのです。エリックはもう50代の半ばを越えているんですが「お茶目で憎めない人だなぁ」と、その時つくづく思いました。

 それから、ホテルをチェックアウトし、JR「新神戸」から新幹線で新大阪へ。次の公演地である金沢に向かうエリックとハジメ氏が10時46分発の「雷鳥15号」に乗り込むのをプラットフォームで見届けてから京都に戻ったのでした。

 

※続きはエリック・カズ初来日ツアー滞在記 / その4へ。

 

 

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