デヴィッド・グリスマン

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●DAVID GRISMAN / LIFE OF SORROW('03)        CD-53 \2400(会員\2300)

 produced by David Grisman; with Del McCoury, John Hartford, Ralph Stanley & The Clinch Mountain Boys, The Nashville Bluegrass Band, Herb Pedersen, Mac Wiseman, Ralph Rinzler, John Nagy, Bryan Bowers; All 15 tracks: A Life of Sorrow(3:18)/ Doin' My Time(4:51)/ We Can't Be Darling Anymore(2:58)/ When You and I Were Young Maggie(5:10)/ All The Good Times Are Past and Gone(3:23)/ Tragic Romance(3:32)/ Seven Year Blues(3:51)/ You're the Girl of My Dreams/ Unwanted Love(2:52)/ Man of Constant Sorrow(3:53)/ Tennessee Waltz(3:02)/ Bury Me Under the Weeping Willow(4:18)/ Pretty Saro(3:00)/ Cabin of Love(2:43)/ Farther Along(6:54)/ ■デヴィッド・グリスマンの『DAWGNATION』に続く新譜は、豪華ゲストとのコラボレイションによるブルーグラス・アルバム。グリスマンの(DGQ名義ではなく)ソロ名義で発表されたアルバムとしては99年の『DAWG DUOS』以来の新作ということになる。これが、メチャクチャに良いアルバムなのだ。アルバム・タイトルだけでなく、ブルーグラス音楽の永遠のテーマ「人生の悲しみ」や「人の世の悲しみ」を歌った作品15曲(収録時間70分余)が収められている。それは同時にブルーグラス・スタンダードを多く含む内容になっているのだ。録音は1987年〜1998年(1曲のみ1969年)に行われており、デル・マッカリーや故ジョン・ハートフォードをはじめ、上記のベテラン・ミュージシャン達とグリスマンとの「魂のコラボレイション」と呼びたくなるセッションによって実現した味わい深い作品群である。ブルーグラスの輸入盤には珍しく全曲とも歌詞付き。


1. A LIFE OF SORROW (Carter Stanley)
  feat. The Nashville Bluegrass Band(Pat Enright, Alan O'Bryant, Stuart Duncan, Mark Hembree) and David Grisman(mandolin); ■カーター・スタンリー作で、スタンリー・ブラザーズが1952年にColumbiaレーベルで録音した曲。50年に同じくColumbiaに残した「Man of Constant Sorrow(あのメガ・ヒット映画『オー・ブラザー』で有名になったアノ曲)」の変型といえる作品(悲しみを抱えて故郷「ケンタッキーに戻ろうとしている」か「ケンタッキーに別れを告げる」かの違い)で、本作のアルバム・タイトルでもある。その後のスタンリー兄弟のマーキュリー録音での再録ヴァージョンではツイン・フィドルも加わったアレンジだが、グリスマンはオリジナル録音のヴォーカル・トリオをフィーチャーしてナッシュヴィル・ブルーグラス・バンドと共演している。パット、アラン、ステュアート3人のヴォーカルが素晴しい。尚、この曲は1960年代、ケンタッキー・カーネルズが「Journey's End」というタイトルで頻繁にライヴでも演奏していた曲でもある。

2. DOIN' MY TIME (Jimmie Skinner)
  feat. John Hartford(banjo/vo.), David Grisman(mandolin); ■フラット&スクラッグスのマーキュリー録音で取り上げられ、最も有名なブルーグラス・スタンダードの1つとなったこの曲を今は亡きジョン・ハートフォードとグリスマンがデュエットで聴かせる。ゆったりとしたジョンらしいヴォーカルにグリスマンのマンドリンが絡む唯一無二の「音楽」だ。

3. WE CAN'T BE DARLINGS ANYMORE (Lester Flatt/Curly Seckler)
  feat. Del McCoury(guitar/tenor vo.), Ronnie McCoury(mandolin), Rob McCoury(banjo), Jason Carter(fiddle), Mike Bub(bass) and David Grisman(mandolin); ■50年代のフラット&スクラッグス50年代初めのレパートリーとして有名な曲。恋人との別離を歌ったこの曲をデル・マッカリー・バンドをバックにグリスマンが歌う。テナー・ヴォーカルのデルとのデュエットは2人の長い付き合い(アルバム『EARLY DAWG』参照)を考えると感慨深いものがある。グリスマン(右チャンネル)とロニー(左)の息の合ったツイン・マンドリンも聴きものだ。

4. WHEN YOU AND I WERE YOUNG MAGGIE (J.A.Butterfield)
  feat. Mac Wiseman(guitar/vo.), David Grisman(mandolin); ■第一次世界大戦以前のアメリカで最も有名な曲の1つであったこの曲をグリスマンはマック・ワイズマンと共演。1949年当時、ビル・モンローのブルーグラス・ボーイズでマックと共にメンバーとしていたドン・リーノウは、その後レッド・スマイリーとテネシー・カッタップスを結成し、50年代半ばにこの曲をジャズっぽいインスト曲として過ヴァーしている。

5. ALL THE GOOD TIMES ARE PAST AND GONE (traditional)
  feat. Ralph Stanley(banjo/lead vocal), Jack Cooke(bass/tenor vo.), Ralph Stanley II(guitar), James Price(fiddle) and David Grisman(mandolin/baritone vo.); ■1937年にモンロー・ブラザーズが録音した事で知られるようになったトラディショナル曲。マイク・シーガーやニッティ・グリッティ・ダート・バンドがカヴァーした事でも有名だ。それをラルフ・スタンリー&クリンチ・マウンテン・ボーイズとグリスマンの共演で聴ける幸せ。こういうメロディ・ラインを持った曲でのラルフのヴォーカルは、唯一無二味わいがあって本当に「凄いなぁ」と思ってしまう。

6. TRAGIC ROMANCE (Grandpa Jones)
  feat. Alan O'Bryant(banjo/tenor vo.) and David Grisman(mandolin/lead vocal); ■グランパ・ジョーンズのオリジナル作品をスタンリー・ブラザーズが1958年に録音し、キング・レーベルから発表したアルバム『EVERYBODY'S COUNTRY FAVORITES』に収録した事でも知られる曲。ナッシュヴィル・ブルーグラス・バンドのリーダー、アラン・オブライアントとグリスマンのデュエット。

7. SEVEN YEAR BLUES (I.Louvin, C.Louvin, E.Hill)
  feat. Herb Pedersen(banjo/tenor vo.), Del McCoury(guitar), Jim Kerwin(bass) and David Grisman(mandolin/lead vo.); ■ビル・モンローも1960年のアルバム『MR. BLUEGRASS』でカヴァーしたルーヴィン・ブラザーズの名曲。それをハーブ・ペダースンとグリスマンのデュエット・ヴォーカルで聴かせる。ハーブとグリスマンはアルバム『HERE TODAY(CD-0169)』や92年のレッド・アレンをフィーチャーした『BLUEGRASS REUNION(CD-4)』で共演するなど、もともと旧知の仲であるが、その昔(グリスマンが22歳の頃)2人はサンフランシスコのローカル・バンド、スモーキー・グラス・ボーイズのメンバーだったという。この曲でデル・マッカリーはヴォーカルを担当せず、ギター・プレイに専念しているのもニクイ(勿体ない?!)。現メンバーでは最も長くデヴィッド・グリスマン・クィンテットに所属しているジム・カーウィンのベースにもご注目。

8. YOU'RE THE GIRL OF MY DREAMS (Mac Wiseman)
  feat. Mac Wiseman(guitar/vo.) and David Grisman(mandolin); ■カーター・ファミリーが1937年に録音した「ver's Lane」にマック・ワイズマンが3番の歌詞を加えた作品。この曲を1940年代終わりにフラット&スクラッグスに紹介して以後、彼等は朝のラジオ・ショウのスタジオ・ライヴで演奏はしたが、いわゆる正式なスタジオ録音は残していない。マック自身のヴァージョンは1953年にドット・レコードで録音されている。この曲でのグリスマンのマンドリンは、ソロでも歌のバッキングでも最高である。

9. UNWANTED LOVE (D.Reno, R.Smiley, C.Leftwich)
  feat. Del McCoury(guitar/tenor vo.), Ronnie McCoury(baritone vo.), Rob McCoury(banjo), Jason Carter(fiddle), Mike Bub(bass) and David Grisman(mandolin/lead vo.); ■再びデル・マッカリー・バンドをバックにデルとグリスマンが歌うこの作品は、1950年代後半にドン・リーノウとレッド・スマイリーがキング・レコードに残したもの。グリスマンがプロ・ミュージシャンとして最も初期に経験した演奏の1つに、レッド・スマイリーと新生シェナンドー・カッタップスとのステージだったとか。1966年の第2回ロアノーク・ブルーグラス・フェスでの出来事である。

10. MAN OF CONSTANT SORROW (Carter Stanley)
  feat. Ralph Stanley(tenor vo.), Herb Pedersen(rhythm guitar), Laurie Lewis(fiddle), Jim Kerwin(bass) and David Grisman(mandolin/lead vo.); ■再びカーター・スタンリー作品。そして、遂にメガ・ヒット映画『オー・ブラザー』の主題歌「Man of Constant Sorrow」の登場だ。1950年にColumbiaにオリジナル・ヴァージョンは録音されているが、59年に彼等がキング・レコードに残したヴァージョンで、あのコーラス・アレンジが加わったヴァージョンとなる。ハーモニックスから入るグリスマンのイントロのカッコ良さ。美しいトレモロに導かれるように流れるブルージーでアタックの強いマンドリン・ソロ。快感である。

11. TENNESSEE WALTZ (R.Stewart, P.King)
 Del McCoury(guitar/lead vo.) and David Grisman(mandolin); ■近年はエミルー・ハリスが歌ったヴァージョンがCMで使われ、若いファンにも再び知られるようになった「テネシー・ワルツ」は、1948年に作者でもあるピー・ウィー・キング(&ゴールデン・ウェスト・カウボーイズ)の初めてレコーディングされた。それを1951年初めにパティ・ペイジが歌い、実に20週間もチャートのトップ10内を維持したビッグ・ヒットとなり、遂には1965年に米国テネシー州の「州歌」になったという曲だ。デルとグリスマンのギターとマンドリンのみのバックでデルが淡々と、しかし味とコクのあるソロ・ヴォーカルで聴く者を圧倒する。

12. BURY ME UNDER THE WEEPING WILLOW (traditional)
  feat. Ralph Rinzler(mandolin/lead vo.), Artie Rose(guitar), Harriet Rose(bass) and David Grisman(mandolin); ■我が国でも人気の高いこのトラディショナル曲を最初にレコーディングしたのは、カーター・ファミリーで、1927年8月1日、ヴァージニア州ブリストルで行われた歴史的セッション、いわゆるブリストル・セッションの第1回目の事である。そして、モンロー・ブラザーズが1937年に素晴しいデュエット曲として録音している。リード・ヴォーカルのラルフ・リンズラーは1959年にエリック・ワイズバーグの後釜としてブルーグライア・ボーイズに加入したマンドリン奏者&ヴォーカリスト。というだけでなく、ビル・モンローのマネージャー(兼運転手)であったり、ノース・キャロライナ在住の無名ギタリストであったドック・ワトスンを世に送り出した紹介者であったり、あの「Old Time Music at Clarence Ashleys」のレコーディングの編集者であったりという、彼がアメリカ(南部)のトラディショナル音楽を世に広く知らしる事における貢献は計り知れない。アメリカのトラディショナル・ミュージックを愛する者にとって、アラン・ロマックス、アッシュ・モーゼズ、ハリー・スミスと共に彼の名は永遠に残るだろう。そのリンズラーの最晩年である1990年の録音で、彼の朴訥としたリード・ヴォーカルと、それとは対照的なグリスマンの押し出しの強いマンドリン・ソロが繰り返し演奏されており、格別な味わいを与えている。

13. PRETTY SARO (traditional)
  feat. John Nagy(guitar/orchestration/vo.) and David Grisman(mandolin);■ドロシー・スカボローによって1930年頃にノース・キャロライナとヴァージニアで収集され、彼女の著書『A SONGCATCHER IN SOUTHERN MOUNTAIN, AMERICAN FOLK SONGS OF BRITISH ANCESTRY』に掲載された、元は英国生まれの曲。それを(居酒屋の前で)イギリス人から教わったジョン・ナギーは、ピーター・ローワンとグリスマンと共に1967年ボストンで結成したグループ、アース・オペラのメンバーだった人物で、バンド内ではベースを担当していた。ブリティッシュ・トラッドの香り高いメロディに絡むグリスマンの歌心あふれるバッキング。クレジットにオーケストレーションとあるので驚かれるかも知れないが、控え目なストリングスが加わる終盤も素晴しい。

14. CABIN OF LOVE (Birch Monroe)
  feat. Del McCoury(guitar/tenor vo.), Ronnie McCoury(mandolin), Rob McCoury(banjo), Jason Carter(fiddle), Mike Bub(bass) and David Grisman(mandolin/lead vo.); ■三たび登場のデル・マッカリー・バンドと共に歌われるこの作品は、カータースタンリーがブルー・グラス・ボーイズに在籍していた1951年に録音された事で知られる曲で、ビル・モンローの兄、バーチ(40年代後半から50年代前半にブルー・グラス・ボーイズに在籍)のオリジナル作品。オーソドックスなスタイルで演奏されるこの曲でのデルのヴォーカルは例えようの無い素晴しさだ。中盤のマンドリン・ソロがロニー、グリスマンの順で披露されるが、そのスタイルの違いにも拘わらず、違和感なく聞こえてしまうのも面白い。

15. FARTHER ALONG (Traditional)
  feat. Bryan Bowers(autoharp/vo.) and David Grisman(mandolin); ■今なお数多くのアーティスト達にカヴァーされ続けるゴスペル・ナンバー「Farther Along」は、1890年代の賛美歌本に既に載っているという。1930年代にテキサス出身の女性ゴスペル・トリオ、バーネット・シスターズが歌った事で広く知られた後、チャーリー・モンロー、ロイ・エイカフ、ビル・モンロー、そしてエルヴィス・プレスリーまでがカヴァーし、更に有名になった。オートハープとマンドリンのみのバックアップで歌われたこの曲のブライアン・バワーズのヴォーカルは特筆モノで、その力強い歌いぶりの中に悲しみも見事に表現されていて、アルバムの最後を飾るにふさわしい出色の出来ばえとなっている。

 

以上、本作『LIFE OF SORROW』のライナーを参考にしつつ、曲目を紹介させて頂いた。もう、絶対に良いので、是非お聴き頂きたい。

 

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