これは、アコースティック・ギター・マガジン誌の渡辺真一さんにお寄せ頂いた原稿です。 

 

 

プー横丁さん、開業40周年、おめでとうございます!

 

  私は人生40年ですが、紆余曲折、迷い迷いのそれと、一心不乱ひとつことに邁進されてきた40年が持つ

深み・重みはまるで違うばかりか、Poohさんは私のような青二才にも分け隔てなくいつだって懇切丁寧・平身

低頭。ただただ敬服するばかりです。

  もともとギター・マガジン編集部でオールド・ロックの企画ばかり担当してきましたので、“アコースティック”

に異動してからはプー横丁さんにたくさん助けていただき、かつ素晴らしい音楽への架け橋となっていただき

ました。改めまして、どうもありがとうございます!

  とかなんとか言いながら、三つ子の魂百まで。まだまだドライブしたトーンは私の素養でありまして、プー

横丁さんに取り扱いのないCDの紹介原稿をこちらに寄稿させていただくのは全くもって恐縮ではございますが、

以下の3枚を挙げさせて下さい。

  

  
 


The Allman Brothers Band 『Eat a Peach』
 1972年

  恥ずかしながら、3度のメシよりオールマンズということで生きてまいりましたので、まずはこちらから失礼

します。オリジナル編成最後の作品であり、Duane Allmanの遺作となります。ここには、現在まで続くその音楽

の多様性が集約されているように思います。私はロックが好きです。彼らの音楽、いわんやこの時代の多くの

バンドにはたくさんの要素が溶け合っていますが、オールマンズはどっしりロックなのがいいんです。その上で、

ジャズの即興要素もあれば、歪んだブルース、ジャンルを越境したジャム、カントリー・スウィング、バラードまで

ある。理屈ではありませんが、そんなエレメントがロックの中で作用している点に、のちのち理由付けすると、

惹かれたのかもしれません。もともとポップで大甘だった「Melissa」はアコースティック核で清廉に。寡作の

Duaneが残した美小曲「Little Martha」に至っては、勝手、娘にその名をいただき我が人生の最後まで引き

ずるお付き合いとさせていただきました。

  

 

 

Don Nix 『In God We Trust』 1970年

  先刻の初来日公演には思いきりズッコケましたが、ともあれ最高のシンガー・ソングライターに違いあり

ません。レオン・ラッセルのシェルター・レーベル産で、レオンが振りかけたゴスペル調味料とそれを表出する

マッスルショールズ・リズムセクションの妙技。この生々しいアンサンブルは、歪んだギターばかり聴いていた

学生時代の私にはとても新鮮に響き、今もって愛聴しております。来日を前に改めて諸作とじっくり向き合い

ましたが、いずれも楽器の置き位置、バランスが完璧なのに改めて驚いた次第です。エディ・ヒントンのギター

も滋味豊かなれば、語り部ファリー・ルイスがまたいい味わいなんですね。ドンとファリーはAlabama State

TroupersでもMad Dogsテイストな忘れ得ぬ名盤を残しています。

  

  

 

日倉士歳朗&佐藤克彦 『海風』 2005年

  リリース以降、切らすことなく愛聴・拝見させていただいています。横浜のスライド魔神・日倉士歳朗さんと、

最近は“清川村のダニエル・ラノワ”なんて呼ばれる佐藤克彦さんの邂逅は、優しく心撫でる風を吹かせてくれ

ました。日倉士さんが奏でるブルースとゴスペルの表裏に滲む男の悲哀、異能のギター職人である克彦さん

による即興伴奏の煌めき、ふたりがリラックスして、そして本気で曲に向かった時、2本のギター(Weissenborn、

Gibson L-00)はこれほど“引っ付いて”しまうのかと、いまだに聴くたびに新鮮で心を震わせています。おふた

りのライブでは必ず聴ける冒頭2曲は傑作に違いありませんが、克彦さんの手に成る「No Worry」こそ、氏の

才能が溢れ出た世界に轟くべき最高傑作だと信じています。

 

渡辺真一

  

  

 

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