これは、佐野元春さんに送って頂いた原稿です。 アルバムのジャケットはこちらで用意させて頂きました。

 

 ハートランドからの手紙#153

 

 佐野元春です。

 プー横丁開店30周年! 30周年、と聞いてただひたすらリスペクト、です。

 プーさん、そしてお店を支援する皆様に、心からのおめでとうをお伝えしたいと思います。

 さて、「私の好きな3枚のアルバム」。

 誰れにでも多感な10代というものがあり、そこで触れ、心が動いた音楽は、成長しても尚、胸のどこかで、正しく、美しく、鳴り響いているものであります。そんな多感な頃に聞いて、僕が不覚にも涙した曲。恥ずかしながら告白します。

 

 1. Randy Newman / Marie (from the album 'Good Old Boys')

 2. Roberta Flack / Jesse (from the album 'Killing Me Softly')

 3. Tom Waits / Muriel (from the album 'Foreign Affairs')

 共通しているのは、この曲を作って唄っているシンガーたちはみんなピアノ弾きだ、ということです。で、メロディーが美しく、言葉がシンプル。感情が極力抑制されている。

 また、3曲とも人の名前が歌のタイトルとなっています。マリーさん、ジェシーさん、ミリュエルさん、歌の内容も当然、彼達に向けられた愛の歌となっています。

 

 マリー、最初に会ったとき君はプリンセスに見えたよ。

 ジェシー、ベッドに穴が空いたみたい。戻ってきてちょうだい。

 ミリュエル、俺の悪い噂は気にするな。また会える日まで元気でいてくれ。

 

 せつなく、哀しい三つのストーリー。これを聴いた10代の頃は、恋愛の経験といったってまだ子供じみていたはずなのに、今思えばなぜ、こんなオトナの唄に、泣けちゃうくらい心が動いたのか、不明。同時に、ソングライティングっていうのは奥が深く、これは一生かけて究明していく価値があるぞ、と確信したのは事実。

 10代の頃、僕自身、この3曲に会っていなかったら、どうだったか。会うべくして会ったのか。僕と曲が磁石のように引きあったのか、わからない。
ひとつ確かなのは、この3曲を聴いたとき、僕はひそかに、シンガーソングライターになろう、と決意したことだ。誰とも違う言葉とメロディーと歌い方で、回りの友達をあっといわせてやろう、と、そう決意したんです。
それから僕は、ずっとこうして歌を書いては唄うことを続けている、という訳です。

 またどこかで会いましょう。

 佐野元春でした。

 

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